〜夏は夜。月の頃は更なり〜  2009.7.18
便風をご愛読くださっている皆様、ご無沙汰して申し訳ありません。
10周年に入りバタバタしておりますが近況です。

今の季節、夏の夕方から夜にかけて涼しい風がふく頃になると亡くなった父がしきりに思い出されます。
「夏の夜はいいなあ」と父はよく言っていました。
(そのころ家族で住んでいた)関東の夏が北国育ちの父には暑いのか上半身をはだけて呟くように言った姿と、 毎年夏になるたびに聞いていた「夏の夜はいいなあ」の言葉が懐かしく思い出されます。

その後、学校で「枕草子」の中に-----夏は夜。月の頃は更なり。---- とあるのを見て平安の昔から言われていたのだと驚きました。その頃の私は ----秋は夕暮れ。----のほうに魅かれていましたが最近は父の言葉にも 清少納言にも共感できるようになりました。

仕事が終わり、帰宅する道で優しい風が吹くと、思わず立ちすくみます。
子どもの頃のあの時の居間の光景や、父がいつも座っていた場所、
お茶が好きで『「お茶飲み選手権」があったら俺は絶対優勝する』と言っていたこと、

無口なのに話すことを職業にした父、ぽつぽつ話してくれた尊敬する父のこと、
風が吹く数秒間にいろいろなことが身体の中を吹き抜けます。
あの頃のお父さんの歳を私はもう越えたのですね。
私の大切な沢山の人たちがだんだん「あちらの世界」に集まってます。

最近思いがけない方々のご訪問を受けました。
その嬉しいエネルギ−が便風への追い風になりました。

     淳子記



便風とは
「びんぷう」と読みます。
意味は、「(1)追い風。順風。(2)便り。手紙。音信」を表します。
大辞林(国語辞典)